昨年は電子出版元年でした。電子出版二年の今年はどうなるのでしょうか。

先日、何ヶ月かぶりにニュースステーションを見ていたら電子書籍の特集をやってました。内容を見て、あぁやっぱり自分は電子書籍を作ること「だけ」には興味がないんだなと思いました。特集では電子書籍は中高年に人気だと言っていました。そうですね。実際そうなるだろうなと去年から思っていたのですが本当にそうでした。

というのも電子出版が紙の本をデジタルデータにして端末に向けて売る、というだけだと結局買うのはいままで本を買っていた人だけであって、何も新しくないんじゃないかなとここのところずっと思っています。

村上龍氏が電子出版社を作って売っているということでその電子書籍を買いました。普段、氏のエッセイは買うのですが小説はまったく手つかずで(どうしても面白く読めない)、iPadで1500円も出して買ったのですが、その新機軸を楽しむまでもなく、やっぱりその通りで読み通せず。たぶん次回からは小説は買わないと思います。至極当たり前ですが電子だから買うわけではないですね。

このようにすでに紙の本が売れている著者であっても、確かに販売機会が増えることで大変朗報なことだと思うのですが、これから新しく世に本を出す人のことを考えたら、いくら電子出版とはいえコストはかかりますし、従来の店頭で売る以上に認知させて販売することが難しいのではと感じています。書店で売れなかったのに、電子書籍で安くなったからといっても買わないですよね。もし安くなったとしても、私自身、その廉価な電子書籍を読む時間があったら、より作り込まれているアメリカのドラマをWOWOWで見てると思います。

去年32booksというコンセプトをまとめながらも、夏頃に進行を中止したのも、そうやって取次口座を持っている既存の出版で売れているものと同じアプローチで、執筆を依頼して編集して営業して電子書籍を売るみたいなことをしても勝算は少ないし、そもそもそれだけじゃ面白く無いと感じたためです(実現するためには当社の規模としては莫大な投資が必要なこともそうですが)。

32booksに関して言えば、いまでも32ページの電子出版というコンセプト自体は生きていると思っています。要はどこでそれを販売するのか、どうやってお客様を集めるかということをまず第一に考えるべきだと思いました。この点についてはずっと以前からコミュニティを作ってそこで販売すればいいんじゃないかと答えはでていたのですが、言うは易く行うは難しで、まずそのウェブサイトをどうやって作るのかというところから始まって、場を作ること自体が至難の業。この半年間、SEIHAでも苦悩を続けていましたが、この電子出版を実現するほうでも苦労してました。

そこで32booksを中断したころから考え方を改めて、すでに有益なコンテンツメーカーである方のうち、一つのテーマに絞って深く掘り下げることができることが可能な方々のコミュニティ(というか販売する場)を作ることをサポートするところから電子出版ビジネスを試みてはどうかと考えました。非常に迂遠なことではありますが、実際に絞ったテーマで優良なコンテンツが集積される場所は、現在でも優良ブログやメルマガが立派なメディアとなって販売場所になっていることを考えてみても勝算のあることではないかと考えたのでした。そこで、32booksのプラットフォームを作るときから地道に手伝ってくれている@takeruiくんと一緒に去年の秋頃からずっとコツコツコンテンツ販売の準備を始めていたサイトでいよいよまず1つ目のプロジェクトとして明日から販売開始です。

ということで続きは明日また書きますが、先に書いた村上龍氏が正月の日経新聞で、電子書籍も紙の本と同じく完成度が大事だと言っていたことに着目しています。プログラミングにミスがない、ページめくりがスムーズであるといったことは、紙の本で装丁がいいということと同じということで、まったくその通りだと思います。この点はSEIHAにも通じるところで、今私の中では、一緒に仕事をしていただけるシステムエンジニアと出会うことが大きな目標となっています。

今のデジカルにはブックデザイナーと同じくシステムエンジニアが必要です。