これはビジネス書だ!という書評を見て、店頭で買うかどうか散々迷ってた一冊。
寸前になってwowowの連続ドラマwでやると知って、それが「空飛ぶタイヤ」のスタッフだと聞いて、見終わるまで読まないことにしました。ということは読まないかもしれないな。

下町ロケット | WOWOW連続ドラマW

空飛ぶタイヤは2年前に見てます(2009年4月15日「空飛ぶタイヤ」)。

前作でもちょっと思ったけど、大企業対中小零細企業の対立構造はもうステレオタイプだと思います。それにモノ作り神話が日本を支えるってのもいい加減、他人事の綺麗事じゃないでしょうか。本当にそうなら、みんなで工場に勤めればいいんじゃないでしょうか。

私が見ている範囲でも、大企業こそ力のある小さな会社と積極的にパイプを開こうと真剣にやっているように見えますし(小さな会社の偉い人のほうが横柄なのは昔からだと思う)、モノ作りといってもその中身は当然のこと変わって来ていると思います。

一つだけ今後のことではっきりと分かっているのは、工場(こうじょう)の時代ではなく、工場(こうば)の時代になっているということでしょうか。

デジカルも一時、工場(こうじょう)を目指ししてやってきていたときもありましたが、というのは参考にしている昔の経営者が工場経営者ばかりだったからですが、今は大局を見据えて工場(こうば)を強く意識しています。

この工場(こうば)、小さいから優しく暖かい人間的な職場といったマスコミイメージで実現できるわけもなく、本当にシビアに集中して、ギリギリの資源で仕事をする前提で、いかに人間味溢れた職場を作れるのか、その実現は並大抵の努力じゃ無理です(社長がね)。

ともかくいまの経営本には出てこないような、本当に高収益な小企業がいま何をやっているのかを知り、一生懸命なぞりながらやってます。

さて、1話の冒頭から引き込まれました。

大口取引先から取引中止を一方的に告げられ大幅な売上減が見込まれる中、資金繰りで窮地に立たされている製作会社の社長。営業部長とメインバンクから出向してきている経理部長と対策を練っています。

社長「銀行から借りるしかないか。」
経理部長「それも難しいかもしれません。」
営業部長「そこをなんとかするのが仕事でしょう。銀行から出向してきてるんだから。」
経理部長「努力はします。しかし、借り入れが少々多いことに加え、研究開発費もかなり膨らんでますので」
社長「研究にはなにかと金がかかるんだよ。でもおかげで、バルブシステムの特許も取れたし商用化を目指せば売り上げにつながるはずだ」
経理部長「バルブシステムといっても水素エンジンで動いているのはロケットぐらいなもんですよね」
社長「このシステムじゃ実用性がないっていうのか」
経理部長「銀行がどう思うかです」
営業部長「うちは創業当時より研究開発型の企業なんだよ。技術力やノウハウってのは研究開発があるからこそ蓄積できるんだよ。それがなくなったらうちの競争力や優位性ってのはすぐなくなっちゃうと思うんだけど」
社長「技術は立ち止まったらそこで終わりなんだよ」
経理部長「社長、社内では誰も言いませんから、私があえて言わせてもらいます。社長はまだ研究者だったころの夢が忘れられないんですよ。だけどもう研究者じゃない。経営者なんです。夢を追いかけるのはしばらく休まれたらどうですか。

研究者を編集者とかウェブプロデューサーとか、バルブシステムをSEIHAとかに置き換えながら聞いていたので、かなり突き刺さりました。

もっとも、ドラマとしてはそこで簡単に夢を諦めずに、社長は信念を貫くということになるんだと思います。それもまた単純でどうかと思うところもありますが、まぁそこは小説、ドラマですよね。もうブツブツ言わずに素直に楽しみます。

で、この一旦休んだらどうですか、という経理部長の言葉が本当に身にしみます。
数ヶ月前の経営会議でも会計参与に似たような趣旨のことを言われました。

夢は大事です。しかし社員の生活を守るための売上を考えることも大事。
そして全ての責任をとるのは社長。

だから、これからどうするんですか社長!となるわけですが、そこが「諦める」じゃなく、休むという選択につながるんだと思いますね。

この半年、いろいろと大変でしたが、取りかかったSEIHAなどの事業については全く諦めてないです。恐るべき事に、気持ちも開始時から1mmも後退していないですよね。

ただし、本当の意味で夢を実現するためには、しっかりとした土台が必要、土台を作るためには準備期間が必要。それなくして真に夢は実現しないという現実を、以前にも増してしっかりと受け止めたということです。

諦めが悪いんじゃないか、とかまだまだ執着しているとかじゃないかとか心配されそうですが、そうではない証拠に、前期決算で攻城団開発や事務所縮小移転にともなう支出を前々期以上の大幅な赤字として吐き出しました。

全部整理してすっきり1から出直してます。

穴埋めに借入資金も盛大に投下しましたが、まぁそんなのはちゃんと稼いで返せばいいだけの話です。過去のことをいちいち気にしてないで前に進んで次のチャンスを伺いなさいという話だろうと思ってます。

個人的な話で、ちょうど2年前にようやく奨学金を返し終わってすっきりしたところだったのですが、いま考えるとあれを返すために必死に2,30代は働いていたような気もします。そう考えれば、要するにそれぐらいの何かを背負ったほうが本気になるということでしょう(と先生も言っていたしね)。

というわけで、移転して決算してすっかり腹が据わりました。そして、縮みきったものを入念にストレッチし続けてきたので、そろそろ立ち上がりたいと思います。

莫大な赤字や借入も、個人で考えると大変なことですが事業収益から考えればたいした額ではなく、逆に一気に返すぐらいにの勢い稼いでいけば自ずと売上あがるし、結果社員の給料は上げられるし、大きな赤字後のV字回復では、すぐにきれいなB/Sに戻せます。

そう思ってこの2ヶ月ぐらい地道にやっていたら、想定外に大きく効果が現れてきて、難しく大きな仕事がどんどんやってき初めて、やりがいだらけになってきました。

ここからが本当の工場(こうば)作りの出直し第一歩。

これまでの失敗を振り返り反芻しつつ、今朝も一件、新しい仕事について現場社員全員で(といってもたった4人だけど)、プロジェクトの進捗についてミーティングしました。

今は、社員一人一人が高付加価値な仕事をする会社、結果的にみんなが高給な会社を目指しています。そのためにもさらに一層 ”しか” 企業を目指したいと思いますね。