小さな編プロの社長としては、読み飛ばすことができない記事ですね。

竹熊君、“紙”はもう、ダメだよ…(後編)- たけくまメモ

しかし、私自身は自分の商売が上手くいかない理由を、業界や市況や時代のせいにはしたくないし、確かにこのA社長のいうとおり出版業界の事情は綺麗事ではすまされないとは思っているけど、それは商品・サービス開発をする現場で、取り澄ましたクールな職場じゃなく、殴り合う勢いの怒号飛び交う真剣な議論が交わされるような意味で発揮されるべきであって、そういう情熱がなくなったのであれば、ことさら捨て台詞など残さずに、単純に商売を替えて静かに立ち去ればいいと思っています。

だから、あえて、紙が上手くいかないと思って紙を去る人がどんどん増えてくれれば、引き続き紙でも頑張ると思っている当社にとっては福音ですらあると考えています。私自身はこういった出版の議論について一言でいうと、”紙だけ”で考えている人がダメなんだと思っています(もしくはウェブだけ)。というか、今そうやって目前に見えているカタチを再現(コピー)するようなモノ作りだけで完結している人はダメだとも。

これは、このブログでも何度か書いたことですが、紙なのかウェブなのか、形ありきの二元論で議論をしていること自体がもう話にならないと思っています。じゃあどうすればいいと思っているのか?ということですが、今日も大西からそこんところはっきり語っておいてください!と言われたのですが、それじゃあ、ということではっきり言っておくと、万が一にも当社1社で何かイノベーションを発揮して、出版に関する画期的な商品なりサービスなりを開発できたとして、それでこの先ずっと商売万事OKなのか?ということを考えたときに、そういった一人勝ちはNOである時代だということが1つ。

もう一つは、もともと商売というものが、AをBしたいと思っている人に対して、それをしてあげるサービスを提供し手数料をもらう、そういった単純なことだという原点に立ち返って考えてみれば、そもそもAをBしたいと思っている人がどこにいるのか、相手がAをBしたいときちんと理解できるのか、もしくは気づいてない人に教えてあげられるのか、といった、極めて単純に、対面する相手が何を欲しているのかを見抜いて、満足するものを考え抜いて提供していく、ほか手立てがないと思っています。

なので新しい出版の形やメディアの形を実現していきたいとは思っていますが、「提言」していくつもりはまったくありません(だから本も書かない)。直面するお客様に対して、要望されているメディアに関する要望、要求を満足していって実現していくこと、その結果である「実績」をいろいろな人と共有して高めていくこと、そういう過程でしかそれは表すことができないと考えています。

どうもいろいろな人の様子をみていると、そこに何か正解を探し求めていたり、自己確認を繰り返したり、他人の実績を批評してみたり、いずれも何かに依存した議論をしているように感じるのですが、私はそんなことをしている暇があったら、顧客の元にいって話を聞いてくるべきだと思います(もしくはその顧客自体を探してくるべきだ)。

そういった意味で、何か新しいことを提示していくことについては、全く焦る必要がないと考えています。もしくは結果が出ないことを焦る必要はないとも。地道に挑戦を続けて、実績を上げ続けていくほか、我々が追い求めているものを人に見せていくことはできないと思っています。

いよいよ社員もこの標高の高い山を目前に不安が高まってきているようです。本当にこれ登れるのかと。

でもね、登れると思うよ。一歩踏み出せばね。