2009年版「中小企業白書」より

従業員一人あたり付加価値額の推移 2009年版「中小企業白書」より

いま中途採用活動を進めていて、同年配の版元編集者の方々から実態として現在の年収などをお聞きする機会があるのですが、そこで耳にする年収額に愕然としたというか、曲がりなりにも知的生産力を求められる仕事でありながら、もはや学生のアルバイト程度にしか稼ぐことができない状況があることを目の当たりにしました。

しかし、だからといってここでそれに義憤を感じ、雇用問題や格差是正について議論したいわけではありません。全く逆です。いくら金をばらまいたり、右のものを左に、上のものを下に持って行ったとしても、この問題は絶対に解決しないだろうと思っています。

いま当社の場合、上のグラフでいうと右端の数字が7.2になりますが、これを非製造業大企業並の11.6に向かって伸ばしていこうと考えています。そのためには相当の努力が必要だと考えているのですが、いま面接で幹部たちは、口々に面接した人たちについて「うちには合わないと思います(社長の要求が厳しいから)」といったようなことを口にするようになりました。

何が合わないかって、普通だったら楽しく好きなデザインやゲラに赤字を入れる仕事なはずなのに、当社の場合は、それだけじゃなくマーケティングやセールス、さらにはウェブメディア制作の能力も要求しているからです。すなわち、そんなのは向いていません。やりたくありません。と。

しかし、そういうことをきつい厳しいといってやらないから、この表でいけば5.6を割り込んで非常に生産性の低い会社となって、ひいては社員の給料も雀の涙と、そういったことになっているのではないでしょうか。

ちなみにこのグラフの次の項目に「高い賃金水準を設定している中小企業」というのがあって、これが非常に興味深い分析でした。給料が高いから生産性が高いのか、生産性が高いから給料が高いのか、鶏と卵ではないですが、いずれにしても両方とも高くすることを意識して追求することが肝要なようです。

当社の場合は、幹部には経営係数を全部オープンにしているのですが、給料を上げようとすると、コストがかかるので上げたくないなどと言い出したりするのですが、私は断固反対して原則毎年昇給するようにしています(もちろん絶対ではない)。

高い賃金水準を設定している中小企業は、求職者を惹き付けるためというよりも、労働生産性の水準を意識し、その水準の高さを賃金水準に反映させているといえよう。

今後もこの白書の分析結果通りに経営していくつもりです。少しでも高い給料を受け取ることが出来るよう、他所よりも生産性を高める努力をしてもらうつもりです。大変なことでしょうけど、それによって、将来給与額の低さを嘆くことや、会社の先行きを不安に感じることもなくなるはずだと思っています。

中小企業白書