これまで出版事業部では、編プロ業務もデザイン業務も書店にて「売れる本作りをトータルにサポートする」をモットーにやってきました。お陰様で、すべての実績を載せる暇も無いほどの案件に携わらせて頂いております。お取引先の編集者の皆様にはたくさんの機会をいただき本当に感謝で一杯です。

ただ昨年年頭あたりからこの「売れる」という部分に違和感を抱き初め、加えて創業来の願いである出版の新しいカタチの実現に着手するにあたり、昨年末には明確にこの「売れる」部分を変えなければと思うに至りました。要は何を持ってして「売れる」のかということです。

もう出版業界では古い議論で最近では話題にすらなりませんが、本は売れればいいのか?内容が良ければいいのか?という議論。出版は文化かというような話をし始めれば、ブログエントリーに何かを書いてまとまるようなものにはならないですが、ここは単純に、作った本が売れないと新しい本を作ることができないということだと理解しています。

この点において当社の編集、デザイン部門が版元各社に対して「売れる本作りのサポート」を提供することは今でも間違いではないと思っています。特に競争が激化しているビジネス書部門では、配本直後に店頭で引き立っているデザインかどうかということは、この売れる問題に直結しているわかりやすい例だと思います。

最近世の中は「そこそこ志向」といわれているようですが、私自身は「そこそこ志向」で上手くいっている出版社を知りませんし、もしくは「そこそこ志向」でやっている出版社の仕事で面白くかつ収益に繫がる仕事に出会ったことがありません。ということは「売れる」こと、ベストセラー志向は大切なことであるのは言うまでもないと思っています。

加えて昨年から当社では、本に留まらずウェブメディアの企画、デザインについても業務範囲を広げることにしました。これもまた私自身の念願でもあるのですが、こちらもヒットするサイトでなければ意味がない、つまり作っただけでは意味がないということは、出版は文化だとかいう以前の問題でことさら大声で言うまでもありません。SEOなんてそういう意味では極めて当たり前のことであって、それを目的に議論をすること自体も意味がないと思っています。

ただ、だからといってなにか下世話でセンセーショナルな話題を提供しないとサイトはヒットしない、すなわちバカと暇人のもというのも一方でおかしな議論だとずっと違和感を感じています。

今これに加えて電子出版と新しい端末の登場いう軸が加わってきて、ますます出版を巡る議論は、いったいどうしららいいのかという混迷の度合いを増していると思うのですが、これらすべての問題を一気に解決するためには、それが「読まれる」ものになっているか、もしくは「読まれる」仕組みになっているか、という点に集中して考え実践すればいいのではないかと今は思っています。

なんだ当たり前じゃないか、というような話ですが、不況やら構造改革やら政権交代やらなんやかんやで、その当たり前のことをきちんと考える暇も無いのが実情で、それを実現しようとするのはとても困難だなと実感しています。

しかし、読まれるものであるならば、たとえ出版不況であっても書店店頭で売れるだろうし、サイトであればリンクが増えてヒットするだろうし、内容がとても高尚であったとしても間違いなく読者は増えるだろうし、きちんと売れるだろうし。

もしかして途中で考えが変わるかもしれませんが、2010年の初頭にこういうように考えていたという記録として残しておこうと思います。そして、今年はこの点を社員のみんなと徹底的に実践していって、収益を上げたいと考えています。