「先に進むほど、ゴールは遠くなる」
これは去年からずっと講演の収録をお手伝いしている林英臣先生の昨日のメルマガのタイトルです。まさに今この心境で、SEIHA、攻城団の状況についてお伝えしなければなりません。
一連の事務所縮小移転については、直接的なトリガーは地震でしたが、遠因は攻城団の開発遅延と、その影響による受託業務の営業不振(トップセールスとして)の2つに集約されます。
これまでもSEIHAのブログで何度か開発の立て直しを図っていると告知して進めてきましたが、4月末と5月末のタイミングで限定公開、そして一般公開へとの最終計画も、GWに入る直前に、それがほぼ不可能であるという判断に至りました。
攻城団については、開発着手からすでに一年余。コンセプト、デザイン、HTML、データベースなど、当初想定していたものは先月中に仕上がりました。しかしながらシステムのバグ改修とテンプレート組込作業については、進行の遅延を繰り返し、その目処がつかず、ここに至って、それぞれの進捗が完全に行き詰まったため、先週末の段階で開発の一時中断と現開発チームの解散を決断しました。
現時点では、内部的に限定公開と決めていた機能制限バージョン完成直前(数個のバグが改修されていない状態)で止まっています。残る作業としては、フルバージョンのテンプレート組込とバグ改修です。
私が報告を受けている状況では、あと少し、がずっと続いていました。ご案内を繰り返していた方々には結果的に嘘をついてしまうことになってしまい本当に心苦しい限りです。
ただし開発を諦めたわけではありません。攻城団を完成させて、SEIHAも事務所縮小の出直しと同じく、イチからやり直したいと考えています。そのためにも、二度と同じ過ちを繰り返さないように、このエントリーでは、今回の開発が失敗に至った要因をまとめておきたいと思います。
なぜ攻城団の開発が上手くいかなかったのか、また立て直しに失敗し続けたのか、その要因は以下の3点です。
1.内部設計が完璧にできていなかった。
今回の攻城団の企画は河野さんからの提案によってプロジェクトが始動しました。すでに明確な企画コンセプトがあることに油断して、詳細な設計を詰める前に(それなりに詰めたつもりでしたが)システム開発を外注してしまいました。最終的にこの問題が最後まで尾を引きました。
2.初めての開発をオフショアで行った。
攻城団のシステムは中国大連の会社で開発を進めました。私自身は今でも中国人と日々接することもあるので、外国人だからダメという結論は持っていません。ただし文化として、例えば日本人が納品物といえば、それは80パーセント以上、場合によっては120%の完成度をもってそれを提出するのに対して、60%程度のもので提出し、それに対するストレートな注文と応対を繰り返すことで完成に至るというような背景があることに最初気づきませんでした。
ただ、1.がしっかりしていれば、日本語での意思疎通には大きな問題を感じなかったのでこの問題は防げたと思います。あくまでも我々が未熟であるならば、文化的な背景や直接的な距離が近い相手と組むべきだったと考えています。
3.資金不足に陥った場合の対応が未熟であった。
明確に定めていたわけではありませんが開発チームには途中から受託案件などの作業を手放して開発に集中させました。ただし、小さな会社では、超低利の長期借入金とはいえ、それでも止めどなく出て行く開発資金に対して、開発が行き詰まりを見せた頃から私自身が果断な決断ができなくなりました。
逆に初期のころには果断と思っていた判断も、実は甘い見積に基づく成り行き判断であったことも事実です。また、行き詰まりを見せた段階で「これだけ投資したのだから」という思いを払拭できず早期の損切りに失敗しました。
特に私自身の思いとしては、数百万円で済まなかった投下資金を、きっちり回収するためには「なんとしても」前に進むしかないという、まさに負けの込んだ投資家が陥る呪縛に見事に縛り取られ冷静さを欠いていたと思います。
以上、現時点で開発を失敗したと考えている要点についてまとめました。
併せて残念なお知らせですが、ここまで開発の要所で頑張ってくれていた大西くんが今回の事務所縮小のタイミングで離職することになってしまいました。彼はマークアップエンジニアとしての仕事を超えて、このプロジェクトに貢献してくれました。その彼の特性を活かせず結果的に華々しい成果を上げられなかったのは一重に監督たる私の責任です。
そういう意味で、この開発の失敗要因には、チームを運用する器が私自身に足りなかったことがあるのは言うまでもありません。
現状ですが、現在プロに依頼して、途中で開発が止まっているシステムが果たして使い物になるのかどうか、その分析を依頼しています。それで使えるのであれば継続開発、作り直したほうがいいということであれば、どうやって作り直すのかという精査を加えて、改めて作業に着手します。
その間、平行して新しいチームの編成に動きます。引き続き河野さんにはプロジェクトの監修をお願いしました。また、現チームの徳永くん、玉造くんについては、メディア事業部のスタッフとして、6月以降もデジカルに残存してもらい、プロジェクトの再起も含め活動してもらうことにしました。彼らには攻城団以外のSEIHAの企画書を準備中です。
そもそも事業計画書が揃っていないということも失敗に繫がっていると思います。私自身は事業計画は所詮、事業予想でしかないと思っていて、その意味についてはほとんどないと考えていますが、ただ「これもいいよね」「あれもあるね」で雑談に留まっていた企画案をまとめておくことは必要と考えていました。この際、それをしっかりと準備するつもりです。また緻密なDBの整理を担当してくれていた石川くんにも、引き続き可能な範囲で協力をお願いするつもりです。
その前提で、今回はエンジニアを探すために動きます。募集はせず、私のほうから人を求めて動くつもりです。もともと編集者として著者を探すことと同じことで、私自身人を集めることに関しては、ここ数年大きな思い違いをしていたと反省をしているところです。こちらはフリーランスや法人を問わず、パートナーとして組んで貰える相手を探します。
「先に進むほど、ゴールは遠くなる」
いま本当にこの言葉を噛み締めています。知らなかったからこそ始められた蛮勇を誇る時期は終わりました。これ以上語ることもないほどの痛みも、それに伴う大出血も味わいました。
その結果としてわかったことは単に、ウェブサービスの開発は甘くはないよというような感想ではなく、「こうすれば完成するのか。でも、そのために準備することが山のようにあるんだな」という冷静な事実認識です。
お茶のお稽古でも4年前に始めたころにはどんどん上達していたものも、最近は遅々として進みません。それは進めば進むほど、学ぶべきことが増えていくからですが、これと全く同じ光景をまさにこの開発の仕事の中に見ています。
同時にまた、こういうものを作ればみんなが喜ぶだろうというイメージも明確に輪郭をもって見えるようになってきました。この攻城団の開発中断は震災を起因とするものではありませんが、逆に震災後の日本を元気にするためのサービスとして、また、私自身が新しい出版の形を実現するためのプラットフォームとしても、是が非でも実現したいと考えています。
先に進むほどゴールは遠くなっていますが、ゴールは見えています。なので必ずやたどり着けると思っています。
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