事務所を縮小移転して出直す旨、ブログに書いてちょうど一ヶ月が経過しました。新しい事務所もここと決定して粛々と手続きを進めています。無事審査が通れば来月月初にも引越と計画しています。

会社はコストでしかないという商売の本質的な原点回帰、また今後の事業の柱としたいウェブサイトでのサービスの提供に集中するためにも、極限までそぎ落としたものにすることにしました。あくまでも読者、ユーザー、そして顧客に集中すること、それを意識して。

その結果、今回は制作の仕事を縮小するということで、今週末でおよそ3分の1の社員と道を別つことになります。昨年来よりずっと強いチームを作るということで邁進してきたわけですが、監督の力及ばずの痛恨時です。

転職、独立様々ですが、新天地でみんなの活路が開くことを祈念しています。またいずれの時にか再び仲間となって加わって貰えるような、そういう場所を作るためにもデジカルの器を磨き無理のない形で器も大きくしていこうとも思います。

改めて、こういった決断を下すに至った経緯について、自分の考えをまとめておきたいと思います。

すでにブログでも書き続けているとおり、直接的な引き金は3.11の地震のときの体験に尽きます。それは、余震が続く中、避難した御苑で円陣となって今後のことを決めていたときに、自分一人では到底全員を助けることなどできないこと、あまりに無力な自分に今更ながらに気がついたことでした。

単に地震の被害から守るということではなく、強いチームを作るという名分で、そもそも”社員を守る”ということについて、自分が大きな考え違いをしているということに。

そこから4月の間に考えたことは、自分が心の底から信じられない未来について、頑張ればなんとかなると軽々に約束することはできないし、もちろんそもそもしてはいけないし、それ以上に、嘘をつかないためには、この先の道を行くことについて本当に同意してくれる人と一緒にやらなければならないということでした。

不名誉なことなので、本来書けば損することでしかありませんが、事業の縮小を決断するにあたって、創業来初めて仕掛かり中の仕事(受託制作の仕事ですが)を、これ以上進めると双方不幸でさらに迷惑をかけることになるとお客様に返上しました。

それは会社を存続させるがために、その原資として目先の売上をつかむがために、本来自分がやりたくないことを無理矢理にやっていたこと、その判断によってに生じた不満や不快な空気を、最終的にはその仕事や社員の責任に転嫁しようしたがっている自分の弱さに気がついたためです。

震災が今回の決断の遠因ということでは、自分自身にとっても、自分がやりたくないことは何で、本当にやりたいことは何だったのかということを、突き詰めて考える契機であったといえます。

これから暫くの間は、いわゆる長期計画というのは考えられない時期が続くのではないかと考えています。これまでは長期といえば数年から10年という幅で考えられていたものが、長くて1年単位ぐらいと考えておかないと道を誤ると感じています。

裏返して言うと、今の日本では、将来展望の名の下に、現実を見ない先送りや場当たり的な対応、はたまた恐るべき隠蔽が横行していると実感しています。厭世気分を煽るつもりはなく、そういう時代の空気だと認識しています。

そうであるならば、それに流されず、いつも必ず正しい道を選択し続けることができるように、いまできること、今約束できることに集中して、長くても三ヶ月ぐらい先までの仕事について考え積み上げていこうと思います。

まずは書籍の企画について、これは単純に本の企画をするだけではなく、ウェブメディアやスマートフォンアプリとの連携を考えた、立体的な展開のできる企画について積極的に取り組んでいこうと考えています(し、すでにいくつか企画進行中です)。また、電子出版については、これまでの編プロとしてのお手伝いの部分を超えて、明確に電子出版社として動くことにしました。

次に萩原がやっているブックデザイン。ここは従来からまったく危機のなかった部分ですが、これまで以上に、ますます本が売れなくなるかもしれない厳しい状況において、店頭で光を放つ「売れる」デザインの存在感は増すでしょうし、を提供していきます。

最後に、ウェブメディアの仕事も本腰を入れて展開していくことにします。今回もメディア事業部は存続し柱をしっかりと立てることを決意しました。年初にも書いて書きっぱなしになっていましたが、立体的なメディアをプランニングすることをお客様と共に考えるところから始める会社にします。

一時は技術がないとか、実績がないとか悩んでいたこともあったのですが、だからこそ、この点については、いまできることは一緒に考えることしかないので、毎度その場で真剣に考えて提案を繰り返し、納得頂けるものを提供できるように尽力したいと思います。

最後に、攻城団とSEIHAはどうなったのか、これからどうするのかということについてはエントリーを改めます。こちらは一度敗戦記を書かなければならないと思っています。

大きなことを動かすためには、緻密な計算、仲間、そして勢いが必要と感じていますが、それよりもなによりも、これこそ、いまできることの最善を尽くすのみと今は考えています。