小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ

平川克美

ミシマ社 2012-01-20
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小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ

ミシマ社さんにやられたなぁと思いました。タイトルがすばらしいですね。すっかりしてやられました。なんと1600円。商売が上手い。

本書を読むとお題をもらって書かれたと何度も書いてありまして、なるほど無理矢理感がいっぱいですね。

内容はそれこそ「三丁目の夕日」。その点でほとんど何も参考になりませんでしたが、問題解決にはアジェンダの設定が大切だという竹中平蔵先生の話を思い出し、その点で勉強になりました。

タイトルに引かれたのは、これからは「小規模経営」だと強く意識しているためです。

すでにこの方が言うまでもなく、日本経済は20年前に比べて世界経済における相対的な位置づけが大きく変わっていて、心配しなくても小商いを選択せざるを得ない人が増えるでしょうし、貧しく慎ましやかな生活を送らざるを得ない人も増えるだろうと思います。

私が小規模経営に着目しているのは、すでに産業構造が二極分化していて、大規模ドメスティック産業の生産性が低く、そこと絡んでこの先何年もビジネスをしていくのはシンドイなと思っているためです。

いっぽうで総生産は比較的小規模な産業でも世界規模でビジネスを展開して非常に高い生産性を保っている分野があります。そこが何をどうやってるのかを参考にしています。

それから著者も個人的な風景をもとに考察しているとのことですが、私も仕事や趣味上、業種業界を問わずいろいろな方にお会いする機会があるのですが、ほんとうに経済的に豊かな人で、まるで弱肉強食、市場原理主義、ストレス廃人のような人に私は会ったことがなく、率直にいって、その逆のパターンのほうが多いように思います。なので内容が響かない。

私自身は家族にも社員にも、分かりやすい目標として経済的に満足な生活を送れるような会社を作ることをゴールにしようと伝えています。自分自身の個人史としても、とても貧しい20代を過ごしてきた身としては、この自由な競争社会でなければ、最初に持たざる私はいつまでも格差を埋めることはできませんでした。生産性を高めると努力することは、個人も社会も、そういう点で正しい道筋だと思っています。

なので小規模だけど生産性は高いというところがミソだと考えていますが、本書を読んでいて、知足安分、身の丈にあった生活を維持することと、商いの規模を小さく保つことは、似て非なるもので、ここを一緒くたにしているのが問題だろうなと思いました。

結果的にほどほどになることはあれど、ほどほど計画経営などありえません(それこそ北朝鮮とかがそれなのでは)。一時的に上手くいくとは思いますが経営は永続性が問われるので、基本的に成長なくして継続はありえないと思います。

課題は、いかにそれを楽しくワクワクするようにやれるかというところだと思いますね。その点で、ROBOTの阿部さんの本が参考になっています。