イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る 雇用400万人、GDP8パーセント成長への提言 (講談社+α新書)
話題になっていたので読みました。こういう方を探して本にしたり記事にしたりする編集者はすごいですね。そういう素養のある人を探しています。
しかし、その話題の記事以上に、そのネットの記事でいろいろな人のコメントが読めて面白かった。
多くの人は日本人分析論として「いいね」しているみたいですが、事業経営者としてすごく真っ当なことをごくごく当たり前に仰っているだけなのにこれだけ反響があることに驚きます。
そんなことを考えていたら、麻生元総理が中小企業経営者をバカにした発言をしたとテレビニュースで報じてました。
麻生太郎氏「利益出してない企業は運が悪いか能力ない」
朝日新聞デジタル | 執筆者: 朝日新聞社提供
これを失言としたい連中の底の浅さはよく分かるけど、それをそのように報じないと新聞やニュースが売れない(と思っている)今のマスコミの残念さも味わい深いですね。
それぐらい本書にもあるように経営と「数字」に拒否反応がある人がまだまだ世の中には沢山いるんですね。職人の誇りかなにかしりませんが、そういう人たちは請求書に数字をかかないで何を書くんですかね。
どうやって家族や弟子などを養っていくんだろう。言っていることとやっていることが合致していなくても、出版ですら文化といえば食べていけたこれまでの日本社会の懐の深さを実感します。
著者が「おわりに」に書いているように、「抽象的で曖昧で、評論家的なアマチュア経営者」が多いということなんでしょう。
日本文化という点では、私も著者の方と同じく裏千家茶道に入門させて頂いてますが、そこに家元ビジネスがあるからこそ(行き過ぎた弊害はあれど)、立派に400年も茶道が受け継がれている点が多くの人には見えていないと思います。
それこそ近代茶人がどういう人たちだったのかをちょっと調べてみれば容易にわかることですが、単純に立派なお宝を受け継ぐためにはそれを保管する立派な倉が必要ですし、文化伝承のためには、その活動源としての事業経営が不可欠だと思います。
「数字に基づいた分析と細かな改善」で1人あたりの生産性を高めることを意識し、しかも伝統工芸という社会的に意義ある事業を職人の意識改革から実践して成果をあげていること、さらに裏千家茶道の茶名を持っておられること。
何から何まで、自分が目指していることを遙かに上回る成果で実績あげていて、しかも日本人ではなくイギリス人。
自分が見ていた未来像と彼の分析に大きな違いがなかったことに勇気づけられたのが半分、その圧倒的な実績にものすごい劣等感を植え付けられたことが半分(偉そうですが)。
読みながら、自分はまだまだ分析を出すことが遅いことと、改善を徹底してやり抜く点で不足している部分があると実感しました。そしてなんとなくですが、これが上手く回らないのは「情理」のバランスの問題だと思いました。
イギリス人だからこそある意味「薄情」になれるんだろうけど(それで反感も相当買っているけど)、だからこそ経営が上手くいって周囲が幸せになって社会貢献できているとしたならば、どういう選択をすればいいのかわかった気がします。
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