「売れる本作りをトータルにサポートする」という1枚目の看板でサービスを展開中ですが、創業来、ますます重要度が高まってきているのが、カバーデザインです。

ひとくちに出版といっても大書店に行ってもらえばわかるとおり、様々なジャンルの本がいろいろなタイミングで発刊されていて、とりわけビジネス書といわれるジャンルの棚では毎日壮絶な戦いが繰り広げられています。まさに資本主義の縮図といっていいんじゃないですかね。苛烈な競争のなかで生き残る(売れる)必要があります。

同じビジネス的な要素が強い棚に新書があります。ここも大変な数の新刊が日々発刊されていて、少しでも売れるようにと、あの手この手のタイトルがひねり出されています。ただビジネス書と新書とで大きく異なることが1つあって、それは瞬時に目にとまるデザインがあるかないか。とくに新書以上に参入社が多いビジネス書では、この目にとまるかどうかという問題は非常に重要になっていると思います。

そんなことを考えていたときに、ある編集者の方から「最初の一週間の売れ行きはデザインにかかっている」という話をお聞きして、やはりなと思いました。と、同時にどうして当社が求められているのかということも少しわかったような気がします。

それはデザインの善し悪しもさることながら、入稿のギリギリまで徹底的に修正にお付き合いするということを基準に据えているからだろうと思っています。本は印刷所にデータ入稿して店頭に並ぶまで2週間ほどのタイムラグがあります。いまやビジネスキーワードはネットで大量にそして瞬時に消化される時代ですから、最後の最後までタイトルを吟味し、かつそのタイトルに見合った読者を引きつけるカバーデザインを制作しなければなりません。

そういった場合、欠かせないことは、その修正要求にどこまでも応えることができる体制を整えるということだと私は考えています。社員にも常に作業効率を考えて、残業をせずにきちんと休みを取ることを要求しているのも、そういった詰めの段階で必ず過重な作業が発生するということを見越してのことです。

昔、よく社員が「この案件が終わったらすこし楽になります」といっていたのですがオオバカヤロウと言っていました。エコ運転が叫ばれる時代ですが、急加速、急停車は、燃料効率の悪い運転だというのはもはや常識です。常に巡航スピードを保ち、必要なときに加速する、そういう働きが求められていて、特にデザインでそういう要望に応えられるかどうかは、こんな厳しい時代だから職業生命に直結していると思います。

デザインというとなにやら瞬発的な発想力が求められるような仕事に受け止められがちですが、実はまったくその反対。継続的に大量の仕事をこなすことを前提に、今後も社員の育成に取り組みたいと考えています。