ブックデザイン事業と双璧を目指すべく2年前に立ち上げたエディトリアル事業ですが、売上もここのところコンスタントに上回って伸びていて、いよいよ独り立ちの時を迎えました。この事業は、装丁や電子書籍のように目立った実績として外には見えませんが、本作りの基礎部分を担当する大事な事業です。

私も萩原取締役も、DTPから原価管理まで担当する編集アシスタントからスタートして20年。それぞれそこから編集者、デザイナーとして道を進んできました。いまこのエディトリアル事業を支える2名の当社生え抜き社員には、その萩原さんと私からそれぞれ仕事を教えているわけですが、創業メンバーのDNAを純粋培養的に引き継いでいるという意味でも、今後当社の主幹事業となるのは間違いありません。

いまはまだ事業の規模としては町工場の域を出ていませんが、近い将来これを中小企業の工場規模に拡大すると年頭に宣言して、その施策を実行するため「現場」を日参しています。


去年の後半から机の上に1冊の本を置いて少しずつ読んでいます。その本は江戸後期に書かれた経営書ですが、そこで200年近く前に語られている農村経営と、50年前に生産工場の工場長が語った工場経営と、通底しているものはほとんど同じで、いま自分たちが手がけているデジタルクリエイティブの生産の現場においてもほぼ同じことが通用しています。

事業経営者として生産を考えるとき、直面する課題は合理的な問題も情理的な問題も古今東西代わりがないのだと思います。そして大事なことはその時々の分限を知るということ。そのことに気付かなかった数年前までは、とにかく大きな結果を出そうと焦ってしまい、結果的に徒手空拳で徒労に終わった仕事が多かったように思います。

いまはこの規模でこの段階だけど、そのうちに・・・といった「いつかはクラウン」的な、小さくとも育ちつつある感覚も楽しみながら実際の成長に繋げたいと思っています。クラウンじゃなくレクサスにするけどね。


今週から具体的に、町工場を工場にアップグレードするための新しい生産システムの据え付け作業に着手しました。 生産装置といっても目に見えた機械を導入するのではなく仕組みを埋め込む作業です。

自分がこの業界に入ったとき、最初に観た光景が写植ソフト部門のリストラでした。あれから20年。DTPの時代はこれからも続くと思いますが、アマチュアでも様々な情報に簡単に接触することができる現代、そこにリストラはなくともプロフェッショナルとして存在し続けることが難しい時代になってきていると感じます。

そうなると、強く差別化できる部分はクリエイティブの生産性向上の仕組みそのものと考えています。当然その生産性向上にICTは欠かせません。そのICTについて社長として誰かに負ける気がしない、という点が根拠のない自信ですね。この取組を現代の町工場、その経営者のオヤジとして、何か新しいスタイルを作るべく頑張ってみたいと思います。

ひとまず社長がレクサス乗る前に、社員の給料を上げることの方が先です。今期も期末に大幅なベースアップを社員には約束してますが、お陰様で上半期を好調だった昨年を上回るペースで折り返しているので、ここで浮かれることなく引き続き、楽しいブラック企業の精神で、事業拡大に集中したいと思います。

町工場のオヤジな毎日は結構楽しいです。