創業するときに、版元を目指さず編プロをやると決めて6年。これは正解で儲かりました。

もともと電子出版(のようなこと)を実現する資金を稼ぐために編プロ事業という定義で始めたことだったので、取次口座を開いて版元になるなどの気持ちは全くありませんでした。今も全くないです。

ただ、それでも心のどこかに、単なる”編プロ”じゃないというぞ、という自負、今となってはちっぽけなプライドですが、を持っていたのも事実です。それで新事業を実現するためと気持ちだけ焦ってメディア事業部を作って2年。何度も失敗を繰り返して大赤字を作っての今3年目というのはこのブログでもずっと書いてきている通りです。

途中、デジカルはそういうことに向いてないからやめたほうがいいとまで真正面から言われたこともありましたが、ここで立ち止まって元に戻っても後には何もないとの確信のもと、向いてないと言っていた人たちには外れてもらって、今はメディア事業部だけで真っ向勝負しています。

確かに焦って失敗したところはたくさんありますが、それは実行手法が拙かったことと、自分の器がそにに見合っていなかったということだったと分析しています。

そういう反省に基づいて、この半年悪戦苦闘してましたが、結果、舵の切り直し判断で間違っていなかったと思っています。そして今は紙の本を作る以外の仕事を積極的に増やそうとお客さんのところをあちこち回っていますが、そこで感じることは、まさに編集プロダクションが提供できるサービスの本質部分が、これから求められてくるんじゃないかということでした。

世にアイデアはたくさん転がっています。また、これまで簡単にはアクセスできなかった知見に、容易に触れることができるようになっていると思います。先頃なくなられたアップルの創業社長のような成功をイメージしている人が、起業するしないに関わらずたくさんいて、これからも増えるだろうと思います。スタートアップがもてはやされていて実際にちょっとしたブームになっていますが、何もドロップアウトしてやらなくとも、社内新規事業としての事業創業はこれからもどんどんやりやすい環境になっていくと思います。

一方、就職氷河期と呼ばれたころからずっとこの方、日本人の仕事のレベルは自分も含めてですが、かつての時代よりも全体的に低下していると考えています。これは実際に雇用を続けていての実体験としても。そもそも職業訓練どころか就職の機会すら得られていない人も多いと思います(この点、資本主義国が増え、国境を越えて競争が激化しているので、いくら国の政策を憂えていても根本的に解決はしないと思うので、さっさと、これまでは運が悪かったと諦めてこれから頑張ればいいと私は思います)。

アイデアはある。実行できる環境や資金もある。だけど、実行する能力のある人がいない。素晴らしいiPhoneも、立派な部品を無茶な(恐らくですが)要求に応えて供給できる素晴らしい技術力のある会社があってこそ実現できているわけです。そういった裏方部分をサービスできる会社にしていこうと考えています。

実際、これまでも編プロ編集者の仕事としては、「売れる本作りをトータルにサポートする」という看板で、基本的に版元編集者のサポートとして仕事をしてきました。この点はデザインを提供している萩原も同じ立ち位置で考えています。編集とデザインとワンストップで提供する体制を維持しているのも発注手続きの手間を減らすという意味でサポートが前提です。

なので裏方である編集者のさらに裏方。その商品が売れたら企業担当者の方、版元であれば編集者の手柄でいいと思います(売れなかったら全部編プロのせいってのはあんまりですけど)。そうやって担当の方が仕事で成功してどんどん仕事の幅を広げられるほうが、当社としてもメリットが大きいですしサービス提供機会もさらに増えます。この同じ構造をいまいろいろなところで版元に留まらず試そうと思っています。

また、このときにフリーランスもしくはその集合体ではなく、あえて小規模企業という組織を維持し、これを成長させようと考えているのには別の意図があります。

もうあと5年もすると団塊世代が第一線から退いていきますが、恐らくバブルの栄光よ再びもしくは景気回復をいまかいまかと待っている人々も既得権益の後ろ盾を失えば、強烈な競争の前に一緒に退場せざるを得ないんじゃないかと想像しています。

そうなってあらゆる職場で空洞化が露見し、企業収益が一気に悪化していったとき、本当の意味で日本が衰退社会になったとみんな実感できるのでしょうけど、果たしてそういう状態になったと気づいたそのとき、前述のとおり職業レベルの低下した人材がその部分の穴を埋めになるのでしょうか。

たぶんそれは無理だと思います。また現在の30代、40代は今のようにクールに社会や組織から距離を置いて気取って過ごしていられるのか。さらにいえば今上の世代に突きつけているリーダーシップの発揮を、今度は今の10代、20代から突きつけられることになるわけですが、それを実行実現することができるのか。そういうことを今考えています。

そういう5年先の状況を想像すると、そういった来るべき空洞部分を埋められるような仕事実行チームを作って置くことで(私も社員も訓練しておくことで)、将来の莫大な需要に応えられるのではないかと考えています。

まだ初期メンバーが全員いるころ、大部隊で大戦略を展開するような時代ではなくなっているので、デジカルは特殊部隊の部隊員のように一人ひとりが特殊技術を持ち、チームワークで仕事を片付け、機動力よく次々と困難な仕事を片付けていく、そういう組織にしていきたいということを話していました(もっと優しい物騒でない表現ができればいいんだけどね)。

素晴らしいアイデアやコンセプトを持っているけど実行部隊がない、足りない。そういう人や会社のために、呼ばれたら直ぐに参上して華麗に仕事を仕上げ次の現場に出てていくような、そういうイメージの会社にしようと考えています。

今の社員の技術を最大限発揮させる意味でも、編集プロダクションというサービス業の業態に集中して徹することが現時点では最適解なように考えています。