いつこの言葉を読んだのか忘れましたが、数年前に土光さんの本を読んでいて後ろから頭を殴られたような思いをしました。

「少数精鋭」という言葉がある。この言葉には二つの意味がある。一つは「精鋭を少数使う」ということである。そして、もう一つは「少数にすれば皆が精鋭になりうる」ということである。私は後者の意味を重視したい。前者だと、すでに出来上がった精鋭を自分の手元に集めるということで、虫がよすぎるというものだ。後者では、いま自分の手元にいる玉石混交(ぎょくせきこんこう)の人々を、玉にはますます磨きをかけ、石にはトレーニングによって玉に変えていこうということで、全員の能力を底上げすることを意図している。(土光敏夫:第4代経団連会長)

それまでも零細企業のあるべき姿は少数精鋭と考えていましたが、それは特殊部隊のような、まさに精鋭を少数使うことだと思っていました。戦争映画の見過ぎです。

これは以前も書きましたが、この土光さんの本を読んだ同じ頃に堺屋太一さんの本の中で、沖縄海洋博を企画した堺屋氏が、どうしたら沖縄振興は成功なのかと時の佐藤総理に尋ねたときに、それは人口を減らさないことだと即答され「人はいろいろなことを言っても、そこで住み続けるのであればそれはそれで満足なのだ」と語ったという話を読みました。

本を読んだころは、ちょうど人を減らす決断をしたばかりのころだったので、この話を読んでやはりショックを受けました。そのちょっと前までどうして分かって貰えないのだろうか、そしてなんでそんなに文句ばかりなんだろう1人でやった方が早いんじゃないかと、今思えばなんと傲慢な社長だったかと思います。

そして自分に何が足りないかもよくわかりました。少人数の鉄の軍団を誇ったところで、絶対に過半数を制するような大政党にはならないこと。なによりいままで自分が嫌ってきた無責任な万年野党で開き直る弱小政党と同じような、負け犬戦略だと気付きました。

この2つのことから、まずは少数を維持して精鋭を保つ方針を基に生産性を上げ、それを前提に事業を興してさらなる増員の基盤をつくる戦略に切り換えました。

まるまる2年かかりましたが、昨年後半あたりからようやく指標としている1人あたりの生産高が最初の目標に到達し、エディトリアルと電子書籍の2事業も立ち上がったので、ここが転換の契機だと少数維持を解除して増員することにしました。もっとも増員といっても一緒に仕事をする仲間を増やすということですから、単純に正社員を増やすことだけが増員ではありませんが。

少数維持は撤回しましたが、少数精鋭の方針自体は引き続き堅持です。これまでのメンバーを主幹チームに繰り上げ、彼らをさらに玉に磨いていくフェーズに入ります。

磨くというと聞こえがいいですが、要するに摩擦軋轢の連続ですね。今日もまた傷だらけです。それでもこの先に待っている新しい局面を考えると、この経験もまた得難いことだろうと面白くなってきました。

本日、新しい体制をキックオフしました。すでに一部告知していますが、新しい複数の社名で営業を開始します。